まず、英語英文学科で育てたい学生像をお話しいただけますか?
今井先生
「18歳人口減少の中で大学進学率が50%を超え、大学の在り方も変わってきています。今は、学修成果をきちんと見せていくことが、大学には求められています。学生にも、自分が大学で何を学び何ができるようになったかを自覚し、エビデンスを示しながら自分のことばできちんと説明できるようになってほしいと思います。また、学生生活を通し、学修のPDCAサイクルを自分自身で回していける力をつけてほしいと思います。これらは人生を通して役に立つ力ですし、めざす学生像です。そして大学側は、学生がめざす学生像を意識できるような仕掛けをし、どのように成長していくのかを確認する必要があります。リベラル・アーツ教育の特徴でもある少人数で対話を重視する教育の強みを生かし、ひとりひとりへの丁寧な指導を心がけています。」
学科として育てたい英語コミュニケーション力とはどんなものですか?
今井先生:「学生は簡単に『コミュニケーションをとる』と言いますが、英語を使ったやりとりには色々な要素が含まれます。初対面の人とよい関係をつくるとか、行き詰った雰囲気を変えるなど、苦手な状況をことばで克服しなければいけないし、自分の知っていることを相手にわかるように説明するのも言語話者として大事なことです。社会人への準備として、こうしたコミュニケーション力を育成したいと思います。ただし、本学科では、英語力を専ら汎用的なコミュニケーション能力とは捉えていません。学科の専門的コンテンツの基盤として位置づけ、英語を通じて文学・文化・言語・コミュニケーションの4つの分野に専門的にアプローチする方法を学びます。学生は、この学びを通じて、論理的かつ批判的な思考力を体得します。」
PROGOSテストを教科に活用するようになったのは、どんな経緯からですか?
今井先生
「授業だけでは評価しきれない力を見たかったのです。学生は、用意した内容を暗記して発表するのは得意ですが、突発的なやりとりは苦手な傾向があります。どの程度英語で発信する力があるのか把握・評価する機会が十分ではありませんでした。そこで、授業でのパフォーマンスだけでなく、PROGOSテストの結果も見れば、学生の本当の力を客観的に評価できると考えたのです。」学科としても、教育成果を把握する機会となりますし、個々の学生の現在地を把握することで、さらなる教育改善に繋げていく必要性を感じたからです。
﨑先生
「英語の実力を形にしておくのは大事だと思います。自分がどの程度話せるのかCEFR指標で客観的に把握することで、弱点を知り、それが励みにも動機付けにもなります。学生は結果を見て、次はさらに上を目指して頑張ろうと学習意欲を高めることができます。」
現在PROGOSテストはどのように活用されていますか?
今井先生
「PROGOSテストについては現在①②のように使っていて、今後は③④の展開も考えています。
①入学時のプレイスメント・テスト
入学前に実施。PROGOSテストの結果を上級クラスのスピーキングとリスニングのクラス分けに活用。
②1・2年次生:学期末テスト年2回x2年間
1・2年次生はリスニングの授業で、春学期と秋学期末に受験し、これが2年続くので合計4回定期的に受験。成績評価では、PROGOS®の結果をスピーキング科目の総合評価に算入。
③3・4年次生:受験機会を構想中
卒業まで継続できるよう3・4年次生のプレゼンテーションや発音の授業でPROGOSテストの結果の活用を検討中。
④新カリキュラム
次年度開始の新カリキュラムで2年次生の必修となる英語音声学や、プレゼンテーション・スキル関連科目などでテスト結果の活用を検討中。
PROGOSテストを導入する際には、どんな点を工夫されましたか?
今井先生
「PROGOSテストは、時間や場所を問わず受験できるという利便性がありますが、受験率を100%に近づけるため、また、特に1年次生はコンピュータ・スキルの習熟度に差があるため、教室に集めて一斉受験させることにしました。リスニングの授業で使用しているCALL教材のある教室にはちょうどマイクとヘッドセットがあり、うまく活用しています。このように、まずは受験環境を整える工夫をしています。また、周囲の受験者の声を気にする学生がいますが、雑音や人の声を気にして話せないようではいけないと、最初にはっぱをかけました。」
﨑先生
「普通教室に集めて受験することもありますが、学生同士で操作方法を教えあうなどしています。テストに集中しているので、案外、周囲の声は気にならないようです。一斉に始めるので、一つ問題が終わるとシーンとなり、次の問題が始まるとまたがやがやするという感じです。」
今井先生
「結果がすぐ出るので、『えっ、私がB1だって!嘘みたい』など、予想外によい結果だったという声があると、周囲によい影響があるようです。他の学生が『どこがうまくいったの?』『グラフどう説明したの?』など活発に質問しています。これも一斉受験のメリットです。」
安藤
その他、工夫していることはありますか?
﨑先生
「ビジネス英語と聞くと学生はちょっと身構えてしまいます。実力を出しやすいように、インターンシップやアルバイトの経験を使って話せばよいなど、あらかじめビジネス英語への対応をインプットします。そして学生のためを思って大学側がやることも、その意図を説明しないと、学生はただやるだけなりがちです。テストもただ受けるだけにならないよう、目的をもって自律的に学んでほしいとも伝えています。」
今井先生
「語学力というのは日々の積み重ねで力がつくので、PROGOSテストはその成果をチェックするためのものです。中間テストや期末テストのように試験範囲があってそれを一夜漬けで覚えるような勉強の仕方はしないように、学生には伝えています。」
レアジョブレッスンもご活用いただいていますが、導入した背景や成果を教えてください。
今井先生
「授業とは別の英語学習支援として、希望者にレアジョブ英会話を2か月間受講できる機会も用意しています。希望者を募集し、そこから選抜された学生が取り組んでいます。きっかけは、フィジーでダイビング講習を受けながら英語を学ぶプログラムに参加した学生の体験談でした。その学生は、先生が英語を第二言語として話す人だったので、同じ土俵で話せる感じがして、精神的バリアが突破できたというのです。授業でネイティブ・スピーカーの先生に対して苦手意識があり、なかなか話せないという学生が抱えていた課題解決へのヒントになりました。そして、たまたま、英語を公用語として学んだフィリピン人の先生に学ぶレアジョブ英会話に関する記事を見つけて、そこから導入にこぎつけました。学生は、これだけ大学でスピーキングの授業を受けていても「話せない」ことに劣等感を抱えています。実際に英語でのコミュニケーションを通して「自分の英語が通じる」体験をどんどん重ねることも大事だと思っています。」
三浦氏
「PROGOS🄬の解答には、英語力だけでなく、想像力/創造力、瞬時に質問を理解する力、文章を論理的に構成する力が求められます。レアジョブ英会話は、その力を身につけるための訓練の場として大変有意義だと感じています。より高い目的意識をもってテストなどに取り組んでくれるような工夫が今後の課題です。」
﨑先生
「学生はレアジョブ英会話で先生が使った表現を自分も使おうとします。例えば、英会話レッスンで先生が使っていた”You know what I mean?”という表現を、大学の授業でも使い始めた学生がいます。こんな風に、レッスンで学んだことを積極的に使うようになるのはいいですね。」
今井先生
「学生は先生とのレッスンの中でやりとりのコツも習得します。”Why?”と頻繁に聞かれると、自分の意見のあとにbecauseを自然につけるようになりますし、質問をたくさんされるとそれに答えたままではなくて、”How about you?”のように、自分から逆に質問するようになります。プレゼンテーションに、CEFR6指標の一貫性が関連するなど、学生には、スピーキングの理論も理解できるようになってほしいと思います。」
安藤
英語英文学科が目指すのは、今、社会人にもっとも必要とされる「学び続ける力」の育成であり、英語のカリキュラムを通してそれをどう実践されているのかがよくわかりました。PROGOSテストやレアジョブ英会話がその目的にどう活用されているかの詳細なお話は、多くの大学に参考になると思います。
どうもありがとうございました。